■夢とロマンと希望を胸に−4■
●子どもたちは、ぼくの命の恩人だった (株)マルハン代表取締役会長 韓 昌祐 氏 人間は窮地に立たされたときにこそ、まわりの友人、知人の本性を知るものだ。こういうときに、裏切りに出遭うものだ。そのころ、「日本一のボウリング王になる!」と野望をもっていたぼくは、支配人とボウリング場の土地探しをしていた。彼は、三千浦の小学校でぼくの後輩だった。昼夜を問わず、土地探し何日もベンツに乗って奔走し、苦楽をともにした仲だった。 しかし、支配人はぼくが巨額な借金を抱えたのを知って豹変した。ぼくに、4千万から5千万の違約金を要求したのだ。「これで、おまえと俺は社長でも従業員でもない。おまえは乞食や!おれも乞食になった。おれもおまえも、同じ乞食や!」彼は屈辱的な言葉をさんざん投げつけて、ぼくのもとを去っていった。 ぼくは、ぼく一人の世界に閉じこもって自殺することばかり考えるようになっていた。自分で自分を追いつめていた。しかし、「ル−チェ」3階の自宅に戻ると、5人の子どもがころころ床で遊んでいる。子どもたちの無邪気な姿を見ると、人間すぐに死を決断できるものでなかった。ぼくの自殺を思いとどめたのは、子どもたちだった。子どもたちは、ぼくの命の恩人だった。 それに峰山町に、200万円、300万円単位で保証人になってくれた在日韓国人、日本人の友人がいる。もしも、ぼくが自殺をして会社が潰れてしまったら、みんな連鎖反応でお手上げになる。そう考えると、死ぬにも死ねない精神状態になっていた。 ある日、大阪の日綿實業に呼び出され、借金返済の説明をしに行った。そのとき機械部長、審査部長ほか日綿實業幹部の面々を前に、ぼくはなげやりな卑屈な態度でこう言った。「きょうは印鑑をすべて持ってきました。これで好きなようにして下さい。ぼくにはどうにも、借金を返す自信がありません……」そう言うと、機械部の松川常夫部長が烈火のごとく怒った。 「何を言っているのか! あなたは韓国から来た青年で、われわれはあなたの誠実さを見て、金を貸したんだ。西原さん! あんたはまだ42歳や。そんな若さで弱音を吐いてどうするんや!われわれは、あんたを信用しているんだ。もっと頑張りなさい。われわれはこれからもあんたを応援するから、やるだけやってみなさい!」 ぼくは、バシッと雷に撃たれたようにその場に立ちすくんでいた。そしてなぜか、ア−ネスト・ヘミングウェイの小説「老人と海」のワンシ−ンがむくむくと思い出されてきた。(つづく) |