| ■アウシュビッツの音楽隊■
高圧電流を流し収容所の逃亡を阻止する有刺鉄線、毒ガスで殺した後に死体を焼く焼却炉……。地獄絵さながらのポ−ランド南部アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所に、女性収容者でつくる音楽隊があった。 指揮者は、音楽家マ−ラ−のめい、アルマ・ロゼ。高名なバイオリニストだったが収容所送りになった。ほかは素人が多かったという。 楽団は毎朝、強制労働に行く収容者の行進の伴奏をさせられた。それはいつの日か、死を宣告される者への殉教の音楽ともいえた。 楽団はあるとき、尿意を催して列から離れた収容者が、ズタズタに犬にかみ殺される中でも演奏した。 白衣姿の実験医が立つ前で、精神障害者に演奏を聴かせたこともある。やせてサルの骸骨のような顔になった者、ぼんやり片手を前に出す者、夢中でダンスに興じる者……。狂ったように拍手をする者は、本当に狂っていたという。 「墓場の一歩前の光景」とは、地獄を生き延びた歌手のファニア・フェヌロンの証言だ。 |