生物と無生物のあいだ

窓 古賀春江 画 1895−1933
窓 古賀春江 画 1895−1933

●ああ、それはね、動的平衡だから 分子生物学者 福岡 伸一 氏

動的平衡(どうてきへいこう)

[使用例]
効率化できないこと、一筋縄でいかないこと、
意外な結果に終わること、結局、大して差がなかったこと、
だましだましでしか扱えないこと、あちらと思えばこちら、
袖振り合うも他生の縁、めぐりめぐること……

私たちは、自分は自分だ、自分の身体は自分のものだという風に、確固たる自己の存在を信じているけれど、それは実は、思うほど確実なものではない。

私たちの身体は、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸などの分子で構成されている。しかし、それらの分子はそこにずっととどまっているのでもなければ、固定されたものでもない。分子は絶え間なく動いている。間断なく分解と合成を繰り返している。休みなく出入りしている。実体としての物質はそこにはない。1年前の私と今日の私は分子的にいうと全くの別物である。そして現在もなお入れ替わり続けている。

つまり、私たちの身体は分子の「淀み」でしかない。それも、ほんの一瞬の。私たちの生命は、分子の流れの中にこそある。とまることなく流れつつ、あやういバランスの上にある。それが生命であり。そのあり方を言い表す言葉が、〈動的平衡〉である。

そして、もし最初に挙げたような、ままならない、思うに任せぬ状況に直面したり、友人が溜息をついているのを目の当りにしたら、きっとこう言っていただきたい。

「ああ、それはね、動的平衡だから。」

福岡研究室のホ−ムペ−ジにようこそ

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