| ■菜食への道■
●菜食への道 インド北部バラナシ。ガンジス川のほとりでは毎日、火葬が行われている。組み上げた薪の上で遺体を焼く。囲うものが何もないから、訪れた人は一部始終を目のあたりにすることになる。 取材で初めて訪れて1週間になるが、肉がのどを通らない。帰宅するなり、妻が出してくれた夕食のサラダに添えられたベ−コン。思わず目を背けた。焦げ目がいけなかった。大好物の豚汁もだめだ。 思い出したのは、いま話題の映画「おくりびと」。本木雅弘さん演じる納棺師が妻の買ってきた鶏肉をみて吐き気をもよおす。仕事で接する遺体の姿と重なって、食べられなくなってしまうのだ。映画ではその後、ふぐの白子を食する場面が出てくる。人は食わなきゃ生きられない、どうせ食べるならうまい方がよい………そんな言葉に諭されて。 だが、菜食主義者の多いインドには、こんな境地に至らずとも、生きていく道がある。レストランには必ず菜食主義者用のメニュ−があり、これがまた、結構うまいのだ。スパイスのきいた豆やチ−ズの味は素晴らしく、そのうえ消化にもよい。 妻は「作るものがなくなった」としきりに嘆くが、太り気味の身にはちょうどよいショック療法、か。 (朝日新聞より掲載) |