| ■哲学者の苦悩と喜び■
●哲学者は資格不要、考え続けること 哲学者 森岡 正博 氏 哲学者の肩書には、定義はありません。自分とは何か、時間はなぜ流れるのか、生と死の意味は何かといった問題に、徹底して自分の頭で考え続けていくことができれば、あなたはもう哲学者です。医師や弁護士になるためには、難しい国家試験に受からなくてはいけませんが、哲学者になるためには何の資格も不要です。 極端な話、「私は哲学者である」と宣言しさえすれば、誰でも哲学者になることができます。その人がどんな職業に就いているかも、ぜんぜん関係ありません。たとえば古代ロ−マの哲学者マルクス・アウレリウスは、ロ−マ帝国の皇帝でした。かと思えば、古代ギリシャの哲学者ディオゲネスは、いまで言えばホ−ムレスの生活をしていました。 哲学の愛すべきところは、世間の価値観からまったく自由になって、ものごとを突き詰めて考えることができる点です。たとえば、私たちは過去・現在・未来と時間が流れると思っていますが、それを疑う哲学者もいます。存在するのは「いま」だけで、その他はすべてまぼろしだと言うこともできるのです。 また、私が死ぬときにすべてが無になるのなら、私はどうしていまを必死で生きる必要があるのだろうと悩み、それを考え抜くのも哲学の仕事です。 自分自身の生にとってもっとも大切な問題を、狂気のように追求せざるを得ないのが哲学者の苦悩であり、また喜びなのです。 |