■「できません」と云うな■
『立石一真「できません」と云うな』湯谷昇羊著(ダイヤモンド社・1890円) 評・高杉良(作家) オムロン創業者の立石一真は1991年1月13日に90歳で他界するまで起業家として、開発者として世界規模で第一線に立ち続けた。町工場の立石電機製作所を立ち上げたのは1933年、32歳のときだが、家庭と社員を大切にする姿勢に、読者は胸をゆさぶられることだろう。 @借金しない 資金繰りに窮し、「社長、給料出ますの」「すまん、金がないんや。これ売って何とかしてや」などと社員とやりとりし、電熱器やパ−マ・アイロンの現物支給や給料の遅配は、当たり前の時代に、なんと高邁(こうまい)な経営理念ではないか。愛する家族との死別、労働組合員の暴走など戦後、一真が経験した懊悩(おうのう)は筆舌に尽くし難いが、オ−トメ−ションなどへの進出によって、立石電機は奇跡的な再建を果たす。一真の生涯は、ホンダの本田宗一郎やソニ−の井深大と重なるが、拝金主義がはびこり、人心が荒廃している今日、一真の生き方から学ぶことはあまりにも多い。 大前研一は「どんな立派な経営者でも80代になると口、耳、目、頭のうちどれかは衰えるものだが、立石さんはどれも衰えなかった。50歳を過ぎて事を成した人は伊能忠孝と立石一真だけだ」と評した。 |