ベンゲル監督

美しい強者たち
美しい強者たち

●ア−セナルTV・コメンテ−タ− エイドリアン・クラ−ク 氏

すがすがしい晴れた朝だった。ロンドン北部の専用練習場。ア−セナルの選手だった私はイングランド代表のアダムスらと更衣室の前のベンチに座っていた。近づいてきたス−ツ姿の男の顔を知る者はその場に1人もいなかった。自己紹介して立ち去ったベンゲルの背中に「サッカ−の監督には見えないな」とアダムス。「オレに言わせれば学校の先生さ」と続けると、みんな新しいボスに気づかれないよう小さく笑った。

しかし数週間すると、そんな冗談を言う者はいなくなった。彼の練習はほかとは違ったが、文句を言う選手はいなかった。風変わりなストレッチで動きが良くなり、特別な筋トレで強くなった。1人ずつ手渡された食事の指示を守れば体重が減った。そしてチ−ムとしていいサッカ−ができるようになった。パスが連続する美しいサッカ−だ。

それからプレミアリ−グを3度、FA杯を4度制した戦績は、彼の功績の半分も示していない。なにより、若い選手への信頼に驚かされる。勝敗に巨額の賞金がかかっている今の時代に、若い選手にこそ重要な試合を多く経験させようという彼の決意は揺るがない。財力ではマンチェスタ−・ユナイテッドやチェルシ−に及ばないア−セナルだが、若手の底上げによって強力なチ−ムを作ろうという方針をベンゲルが支えている。

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