●古牧(こまき)温泉再生●
●温泉教授 札幌国際大学教授 松田 忠徳 氏 温泉地が変わろうとしている。今、そのうごめきの真っただ中にある。変わらなければ、グロ−バル化の波間に沈みかねないのだ。時代のき−ワ−ドは、「量的拡大から質的拡大への転換」である。みちのく青森の古牧温泉(三沢市)は、東京ディズニ−ランドの約1.4倍もの敷地を有する巨大な一軒宿の温泉である。その極め付きが、名物の「大岩風呂」であった。大浴場の広さはなんと1,200坪もあった。ところが、東北新幹線が02年12月に八戸まで延伸された約2年後に、経営破綻し、05年11月から星野リゾ−ト(長野県軽井沢町)に再生が委ねられた。今年、屋号を「古牧温泉青森屋」に変えた古牧を10年ぶりに訪れた。 新生古牧は雰囲気が一変していた。南部地方の古民家を思わせる懐かしさとぬくもりのあるロビ−が出迎えてくれたのである。旅の楽しみのひとつは、郷土料理にある。夕食時に案内されたのは、青森体感レストラン「みちのく祭りや」。正面の青森ねぶた、弘前ねぷた、八戸三社大祭の山車に見とれていると、係の若い女性が、運んできた「五段せいろ」の料理を説明し始めた。津軽弁なのか南部弁なのか、はたまた下北弁なのか、私には半分しか理解できないが、温かみのある方言にモンゴル出身の連れはしきりにうなずいていた。 「おしながき」を見ると、地元産の山海の幸がふんだんに使われていることがわかる。南部名物なのか、「せんべい汁」が珍しい。デザ−トのりんごシャ−ベットを楽しんでいると、山車をバックに祭りばやしや津軽三味線の生演奏が始まった。フィナ−レは湯客が若い従業員たちと一緒に踊るみちのくよさこい踊り。「食べて、観て、踊る」の青森三昧(ざんまい)である。総支配人の佐藤大介さんによると、古牧再生のコンセプトは「のれそれ青森」。のれそれとは「思いっきり、一生懸命の意」とか。「思いっきり青森の宿になろう」「青森らしさを出していこう」ということなのだろう。 再生に取り組む星野リゾ−トの星野佳路社長は、「文化をテ−マにするのは観光の王道。青森は沖縄に次いで文化が濃い」と、確かな手応えを感じているようだ。 「じゃわめぐ(ざわめく)広場」で南部民謡ショ−が佳境に入っていたが、昨年新設された大浴場へ向かう。内湯は青森産のヒバを使った気品漂う見事な造りである。肌に優しいアルカリ性の湯を引き立たせる木の湯船のぬくもりに青森を感じさせる。「浮湯(うきゆ)」と名づけられた露天風呂と、その奥にライトアップされた林を借景に大きな池と滝があった。十和田湖、八甲田、奥入瀬、白神山地など、青森の美しい水と緑をイメ−ジして造られた、まるで水に浮かぶ母親の羊水のような露天風呂。湯煙越しに聞こえる滝の音をBGMにしばしまどろむ。 |