債権大国の経済学

淀城 冨田渓仙 画
淀城 冨田渓仙 画

日本が債権大国となって以来、20年以上経過した。海外への直接投資や証券投資などから、日本が海外に負っている債務を除いた対外純資産残高が、07年末で250兆円に達し、世界最大の状況が続いている。

これまで債権大国の繁栄を名実ともに享受した国は、産業革命を経た英国と、第一次世界大戦後からの米国である。いつの時代にも、債権大国のいすは一つの国しか座れない。

日本が債権大国になるまでは貿易赤字をもろともせず、設備機械を輸入し、設備投資を活発に推し進めてきた。そして世界に通用する製品が製造できるようになり、輸出が軌道に乗った。貿易赤字から黒字に転じて累積赤字が一掃され、黒字の累積が始まった。

こうして1980年代後半に、米国に代わって日本が債権大国の地位についた。しかしながら今の日本が、かっての英国や米国のように豊かさを得られているかというと、その実感に乏しい。

おそるおそる英国人の識者に、どうしてなのだろうと聞いてみた。教えてくれたのは、「債権大国の経済学」の存在だった。そこでは、「輸出は損失、輸入が利得」と理解されている。すなわち債権大国になると、生産者の保護育成から生活者の文化向上に政策変更が行われる。生活者が消費や住宅投資を増やしてこそおカネが回り、経済成長を牽引し、その結果豊かな生活が実現されるということだ。

日本経済はいまだに主役を代えておらず、「債権大国の経済学」を学ぶことが必要である。現状の経済学に従っていると、額に汗して手にした日本の稼ぎを、期せずして米国がありがたくごちそうになっている図柄から抜け出せない。

(日本経済新聞「経済気象台」より掲載)

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