●話をするということ●
●話をするということ 講談師(人間国宝) 一龍斎 貞水 氏 1939年生 話をするというのは、自分の考えを一方的に言葉にすることとは違うんです。相手にどう伝わるか、相手が求めている話をしているかどうかが大切なのですね。それには、その人の気持ちに思いを至らせなくてはならない。 人間というのは不思議なもので、体験していないことはいくら時間を費やして話しても伝わらない。理屈や情報の受け売りで言葉を並べてみても駄目なんですね。たとえばあなた自身が苦い経験をしてつらかった話ならきちんと届いていくでしょう。 本音を心から話す時、話し手の心の燃焼力が見える。その熱が、聞いている人の気持ちを温かくしていくものなんです。 話をする仕事で今日まで生きてきた私ですが、私の師匠は芸についていちいち指導をしない人でした。ただ、人間を磨けというだけで、磨き方も何も言わない。これが大変でしたね。でもだからこそ、私は試行錯誤することで自分の体験を増やしていけた。 家康や秀吉のような歴史上の人物をどう自分のものにするかと言えば、自分という人間を通して対象を捕まえるしかないですから。 |