●97歳・私の証●
●老人の脳とパズル 聖路加国際病院理事長 日野原 重明 氏 新聞や雑誌の中で、特に年配者の関心をひいている読み物は、「脳を育む」記事だそうです。私も毎週、自分のコラムに目を通した後に、隣のパズル面を一覧します。そう簡単には解けませんが、挑戦する気持ちは決して衰えていません。 日常生活で何か問題にぶつかると、人は解決しょうと努力するものです。問題解決への意志は、子どもの好奇心にも似て、脳を刺激するものです。 私たち医師は、健康上の問題を訴えてくる患者さんを診察する際、症状をよく分析して、検査をすることで病気の原因を見極めています。診断の正否は治療の経過で知ることができます。自分が年をとっても毎日仕事をこなせるのは、やりがいを感じることで、脳の働きが活発化されているからだと思っています。 脳は膨大な数の細胞からなります。脳細胞は体のほかの細胞と違い、刺激を受けながら日々成長を続けます。つまり、使えば使うほど、活性化するものなのです。年をとり、引退して何もしないでいると、当然脳の働きも落ちます。 記憶や空間学習能力にかかわるのは脳の海馬と呼ばれる部分です。PET検査で脳を調べると、海馬に該当する部分の血行がよくなっているのが映像で見えます。年をとって物忘れがひどくなるのは、この部分の働きが低下するからです。 では、年をとっても海馬の働きが衰えないようにするには、どうすればよいのでしょうか。 人間の考える力は、精神を集中して考えることを習慣化することで養われると考えられています。私が尊敬する米国の故ウィリアム・オスラ−教授も「習慣が人をつくる」と言われていました。 老いても、考える習慣が必要だと思うとき、私は彫刻家ロダンの「考える人」の像を思い出します。生活の中でどんなに短い時間でも利用して、すぐ気持ちを転換して熟考できれば、それがよい刺激になって脳細胞が活性化するようです。 また、人間の脳は適度なストレスが加わると活性化するようです。ただし、よくないストレスや過度のストレスは、かえって脳の働きを弱めるようです。 パズルなどで楽しく脳を働かせ、時には難問を解いて適度なストレスを脳に与えることは、脳の活性化につながるのではないかと期待しています。 |