●食事は神事です●
●神と向き合う食 精進料理人 棚橋 俊夫 氏 縁あって山形県の黒川能を見学しました。地元の方々が500年も続く能を守りつつ、神様に五穀豊穣を願って夜通し民家で舞い続けます。寒さに耐えながら合計16時間拝見。舞う方も一生懸命。見る方も目を凝らし静かに座す。そもそも人に見せるための能でなく神に奉納するもの。 人が見ていようが寝ていようが関係ないんです。ただ神と向き合うことに最高の歓びがあるのでしょう。正直体は疲れましたが、気持ちはすがすがしく、一面に広がる田が白銀に輝いて見えました。 このように地方に継承された伝統芸能は、その土地の人と神との交流の証しであり、地方ならではの特殊性が魅力です。ここでは文化の地方分権がきちんと守られ、日常生活の一部になっています。 ところが政治や経済は中央集権化し、続きで文化も都(東京や京都)が基準になっていきます。そうなると、演者や主催者は観客を意識せざるをえなくなり、商業化されます。もうそこでは神と向き合えないでしょう。 確かに「お客様は神様?」です。食の世界も然り。我が家では到来物や朝、夕のお膳をまず神棚、仏前に供え、そのお下がりを皆で分け合います。「いただきます」「ごちそうさま」もそうです。おいしい、まずいを言う前に、目の前の食べ物を通してその向こうにある神とまつすぐに向き合うところから始まります。 まさに食事は神事です。能を見ながら、振る舞われた熱々の地酒と凍り豆腐の素朴な味が身にしみました。 |