●脳の不思議●
●脳は変化し成長し続ける 東京大学大学院准教授 池谷 裕二 氏 健康的な生活をしていれば、脳は常に変化しながら成長し続けます。最近では116歳で亡くなった女性の脳を解剖したところ、ほとんど衰えなかったという報告もありました。「脳は機械のように使い古されることがない」。この解剖結果は、まさにこれを証明したわけです。 脳というものは、使うほど良い状態に成熟していくということです。脳の中はいつもダイナミックに動いていて、昨日と今日どころではなく、数分経っただけでも神経回路のつながり方が変わっています。マウスの海馬の中では、ニュ−ロン(神経細胞)が一瞬一瞬ごとに発火しながら、脳は神経回路を作り直して、成熟に向かっていっているのです。 神経回路ができる時、ニュ−ロンから伸びている長い手(シナプス)とつながるのですが、脳が成熟するとシナプスは整理しながら減っていきます。それは、不要なものだから削られているのです。赤ちゃんはいつも手足をバタバタ動かし、あちこちにぶつかりながらも、やがて目的物に手がきちんと届くようになります。あれは、一見ムダな動きをしながら必要な回路を見極め、ムダな回路を削り落としていく行為です。 こうして、人は歳を重ねて大人になるほど、正確に的確に行動できるようになる。それが脳の成熟の正体だと理解してもよいでしょう。刻々と変化しながら、脳は自分を育てているのです。 *若い脳……若い脳にはまだムダな回路(シナプス)もたくさんあり、小さな町が裏道小道の細い回路でごちゃごちゃにつながっているイメ−ジです。これでは、道に迷います。 *成熟脳……成熟した脳は、経験を積むことで細い回路が削られ、情報が集積された高層ビルと、情報を効率良く運ぶ幹線道路へと整備されていくイメ−ジです。歳とともに、脳の神経回路は整備され、効率良くなっていきます。 (つづく) |